東京高等裁判所 平成7年(う)1401号 判決
被告人 サイード・エシューギー・ザーデ・バミ
〔抄 録〕
原判決挙示の関係証拠によれば、被告人は、上田正枝と同棲するアパートの六畳洋間で同女と就寝中、警察官が被告人を逮捕するためにアパートまで来たことを知り、逮捕を免れるため同女を監禁して人質にすることを決意し、アパート内にあった本件刃物を手にするとともに同女を浴室内に連れ込み、さらに、浴室の前で鎌型包丁を同女の首に突きつけて脅迫するなどして同女を約二時間三五分にわたって逮捕監禁し、その間、同包丁を持ち続け、また、サバイバルナイフをいつでも使用することができる状態で身辺に置いていたことが認められる。このように、被告人は、本件刃物を終始その居住するアパートの中で直接手にし、あるいは身辺に置いていたに過ぎないのであるから、その行為は、右の解釈に照らし、同条の携帯にはあたらないというべきである。検察官は、この点に関し、同アパートは、その居住の実態に照らし、被告人が日常生活を営む自宅ないし居室とはいえないと主張する。しかしながら、被告人は、原判示第三の犯行当時、不法残留や原判示第二の業務上過失傷害の事実により検挙されて国外へ強制退去させられることを危惧し、主にホテルなどに泊まっていたものの、同アパートを引き続き生活の本拠地とし、時々は戻っていたのであるから、同所はなおその自宅又は居室であったと認めるのが相当である。
以上の次第で、被告人の本件行為が刃物の携帯にあたると判断した原判決は、事実を誤認し、又は法令の適用を誤ったものというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
(香城敏麿 森眞樹 林正彦)